心療内科医が教える本当の休み方【読書レポート】

心療内科医が教える本当の休み方

こんな人におすすめ

この本は次のような人におすすめです。

  • 疲労困憊だけど仕事を休むことに抵抗がある
  • 休んだり寝たりしても疲れが取れない
  • 効果的な休息の方法を知りたい

個人的に、仕事をしていた時の自分に読ませてあげたい本です。そうすれば辞めずに済んだかもしれません。

慢性疲労

突然ですが、みなさん疲労は溜まっていませんか?
僕は溜まっています。無職なのに溜まっています。
なぜ疲労が溜まるのか。
僕の場合は休んでも疲労が取れないからです。より正確には、なんとか休もうとしているけど適切に休めていないからです。

特に会社員だった頃は今よりもずっとひどかったです。休んでも休んでも疲労が取れませんでした。土日にしっかり寝ても疲れが取れず、月曜からもうぐったりしていました。
そのうち眠りが浅くなったのか、十分に寝ることすらできなくなりました。そうなってしまっては心身が保たず、程なくして休職。そしてそのまま回復せずに退職となりました。

休息は高等技術

本書の著者によると、休息は難しさを伴う高等技術であると言います。
曰く、人がうまく休むためには以下の3つのプロセスを全て成立させなければなりません。
1. 休みが必要な状態だと自覚すること
2. 休むことができる環境を確保すること
3. 自分にとって適切な休養活動を選択すること
しかしこれら全てが簡単なことではないと言います。

僕自身のことを振り返ってみても、この主張には納得できます。
会社員時代、寝ても寝ても疲れが取れなかったのは、適切な休養活動を選択できていなかったからです。しかし当時の僕には、それ以外の選択ができませんでした。また、休みが必要な状態だと自覚するのも難しく、気づいたら疲労が蓄積していることが多々ありました。

本書の内容

本書は、非常に高度な技術である「休息」の適切なやり方を教えてくれます。
この記事ではその内容を少し紹介したいと思います。

自律神経と3つのモード

みなさん、「自律神経」という言葉は聞いたことがあるでしょうか? 交感神経とか副交感神経とかのことです。
この自律神経が疲労や休息と深く結びついています。

交感神経と副交感神経

自律神経は呼吸や心臓の拍動、食べ物の消化等、人間の生命維持に必要な機能をコントロールしてくれています。自律神経は交感神経と副交感神経に大別できます。
一般的に交感神経は車のアクセルに相当し副交感神経はブレーキに相当すると言われています。
交感神経が優位になると筋肉や神経が緊張し、脈拍が速くなったり呼吸数が多くなったりします。
一方で副交感神経が優位になっていると心身がリラックスし、睡眠や休息に適した状態になります。

古典的なストレス理論

これまで、交感神経がストレス反応に関係していると言われてきました。 すなわち、危機に直面すると交感神経が優位になり、身体は強制的にバトルモードになる。いわゆる「闘争・逃走」反応と言われるものです。
しかし、現代のストレス反応を見てみると、「闘争・逃走」反応では説明できないものがあります。たとえば職場のストレスが原因で無気力になったりぼんやりとしたり、あるいは感情が薄くなったり頭が真っ白になるというものです。

2種類の副交感神経

著者によると、現代のストレス反応を理解するには、交感神経と副交感神経の2元論では足りないと言います。そこで、本書では副交感神経が優位な状態をさらに2つの種類に分類しています。1つは腹側迷走神経が優位な状態、もう1つは背側迷走神経が優位な状態です。
迷走神経とは、副交感神経の大部分を占める神経です。
腹側迷走神経が優位な状態は、これまで副交感神経が優位な状態だと考えられてきた、リラックスしている状態です。
一方で背側迷走神経が優位な状態は、上で述べたようなぼーっとした表情、だるさ、前屈み姿勢、注意力低下、感情を感じにくい、といった特徴を持つ「低覚醒」な状態です。

3つのモード

ここまでの話をまとめると、人間には3つの状態があることになります。
1つは交感神経が優位な状態。いわゆる「闘争・逃走」反応の状態です。これを本書では「炎のモード」と呼んでいます。 2つめは腹側迷走神経が優位な状態。これはリラックスモードです。
そして3つめは背側迷走神経が優位な状態。これを本書では「氷のモード」と呼んでいます。

炎のモードと氷のモード

炎のモードと氷のモードはどちらも人間がストレスを受けた時に現れる反応です。ストレスの種類によって、炎のモードに入ることもあれば氷のモードに入ることもあるし、場合によっては両方を行き来することもあります。
ここで注意したいのは、炎のモードも氷のモードも人間が生き延びるための必要な反応であるということです。
しかし、あるモードが過剰に優位になって戻れなくなってしまうと、問題が生じます。たとえば炎のモードから戻れなくなると「常に気持ちがたかぶっている」「眠れない」という状態になります。逆に氷のモードから戻れなくなると「仕事に行かないといけないのに動けない」「日々に楽しさが感じられない」というふうになります。

本当の休み方

ここまで、人間は3つの状態があるという話をしました。この前提を踏まえた上で、いよいよ休み方の話に入ります。

自分の状態を知ろう

適切な休みを選択するためには、まず自分がどういう状態なのかを把握しなければいけません。 というのも、上でストレス反応には炎のモードと氷のモードがあると書きましたが、それぞれの状態の時に有効な手段が変わってくるからです。
炎のモードの時は交感神経が優位になって興奮している状態ですから、ゆっくりと落ち着いた行動をすると良いです。たとえば瞑想だったり温かい湯船に浸かるといったことです。
逆に氷のモードの時は運動や体操、太陽の光を浴びるなどアクティブな行動が有効になりやすいです。

重度な氷モードの時は

注意が必要なのは、氷モードから抜け出すための行動は、エネルギーを使うということです。氷モードが過剰になりすぎると、そこから抜け出すための活動をするためのエネルギーもなくなってしまうことがあります。いわゆる抑うつのような状態です。
そのような時は、リラックスモードすなわち腹側迷走神経が優位なモードに直接入れていくアプローチが有効になります。
人間は安心・安全を感じるとリラックスして腹側迷走神経が優位になります。なので安心・安全を感じる物を集めて身の回りに置くというのが有効です。
長くなるので割愛しますが、本書では他にも色々な方法が紹介されています。

身体の声に耳を傾けよう

人間は自分がストレスを感じていることになかなか気がつくことができません(その理由も本書に書かれています)。そのため気がついた時には、心身が疲れ果てていて回復まで時間を要する状態になっていることが珍しくありません。
このようなことを防ぐには、自分の身体の声に耳を傾けることが重要です。なぜなら、身体には何らかの形でストレス反応が現れるからです。たとえば、ちょっと脈拍が速くなっていたりとか、胃がキュッとしたりとか。つい見過ごしてしまいがちな反応を身体は発しています。
そのような声をキャッチすることで、自分が今どういう状態なのか把握し、それに対して適切な対応・休息を取ることができるようになります。
本書にはここに書いた以外にもさまざまな方法やアドバイスが載っています。気になった人はぜひ手に取って読んでみてください。